SAYHELLOなども手掛けるグラフィックアーティストSAND。個展「MUDDY」にて。

byHidenori Matsuoka

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昨年できた「中目黒高架下」に、つい先日アーティストESPO(エスポ)とJenny Sharaf(ジェニー・シャラフ)が巨大ウォールアートを手掛けたことなどからも、ここ最近アート方面で注目を集めることの多い中目黒。その中目黒駅からほど近く、目黒川沿いをほんの少し南に進んだところに、クリエイティブエージェンシーとして世界的に知られる「Wieden + Kennedy (ワイデン・アンド・ケネディ)のギャラリースペース「W+K+」がある。2016年秋より数年のみの利用を予定して作られた空間ということから、無駄を省いたシンプルながら機能性をもった空間となっており、通りを歩く人々の目にも付きやすいゆったりした空間だ。
 
今回その「W+K+」にて、SANDこと山本直樹氏の個展『MUDDY』が開催されている。グラフィックレーベル〈SAYHELLO〉を手掛けながら、その他にもアパレルブランドからメディアにいたるまで幅広いクリエイティブを手掛けるSAND氏。ここ最近彼の活動が活発になっていると感じ、在廊中にほんの少しだけ時間をもらって話を聞いた。
 
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6年振りの個展ということですが、前回はどこでしたっけ?
 
「実は、6年振りとは書いたんですけど、“新作の個展”という意味では初なんです。6年前に友人の原田新平君の企画で、その時点での過去作品を集めた『アーカイブ展』みたいなものを原宿のUCでやっていて、それをカウントすると“6年振り”ということです。だから本当は“初個展”でも良かったんですが、『アーカイブ展はノーカウントなの?』って印象になるのも変なので(笑)」
 
なるほど(笑)。佐賀に帰ってラーメン屋さんをやっているNEET氏の企画ですね。では、今回の「W+K+」での展示はどのように決まったのですか?
 
「昨年末に別の小さい箱で個展をやろうという話もあったんですけど、スペースの問題もあってあまり望む形で展示できそうになかったから取りやめになって。そんな時にW+Kのトウタさんから、『よかったらウチの場所使ってみる?』と話をもらったんです」
 
展示作品を見ると、「文字などのタイポグラフィーの作品」、「人物モチーフ」、「ウッドパネルや木製の作品」という3つのカテゴリーがあるようですが、それぞれどのような作品ですか?
 
「パターンのスタイルは3、4年ぐらい書いてて。それをタイポグラフィーの方向にふってみようと思ったのは、1年ぐらい前に偶然ネットで『HIDDEN CHAMPION』でも以前取り上げられてた、ニューヨークを拠点にしている韓国人アーティストYoon Hyup(ユーン・ヒョプ)の作品を見たからなんです。考えやアウトプットが同じという印象以上に、彼の作品にはヒップホップやそういうカルチャーが根底にあって、ストロークだけを追求するのなら、僕よりもやり込んでいるし、バランスも良いし、何より進化していると思ったんです。で、既にやっている人がいるんだったらこのスタイルは止めようと思いました。2日ぐらい落ち込みました。ただ、ふと作品の裏にあるバックボーンみたいなものを原点化して考えた時に、僕の持ってるポップな要素を作品に取り込んで、今までとは違うアプローチをしようと思ったんです。僕の場合は一個一個が切り取られたポップなものがバックボーンだから、フロウや流れとは違う、切り抜ける作品として“文字”をはじめたんです」
 
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その文字の作品は2016年末にWAG GALLERYで行ったグループショー『AN ANNUAL』でも拝見しましたが、グラフィックデザインをやっている人ならではのアイデアというか、ハマってるなと思いました。流石だなと。
 
「その文字の作品が少しずつ変化して、徐々に曲線化してきて、最終的にウッドパネルの作品などで見られる“雲”とか“夜空”などの空間を創りだしたのが今作です。それと今回展示している大きな2枚は実はゴリラをモチーフに描き始めながら、途中でそれを捨てることも自分で想定しながら描いたりしましたね。人物モチーフのものは2月にやった〈FRANK DANDY〉のために作ったものだったので、洋服屋さんの展示だからアカデミックな作品よりも、モチーフ自体に力があるほうが良いなと思ったんです。洋服やプロダクトの延長で見れる作品の方が反応しやすいんじゃないかなと」
 
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ウッドパネルの作品だけでなく、鏡になっている立体作品やくり抜かれた巨大なオブジェなどもありますが、どのように制作したのですか?
 
「僕の絵を元に、スタジオメイトで建築設計を手掛ける「SLOPE」が図面を引いてくれて、「TEN ART WORKS」という職人さんが実際に制作してくれました」
 
自分の中で、普段仕事としてクライアントから依頼される仕事と、こうして自身の作品として発表することはやはり全然違いますか?
 
「僕は完璧に分けて2つの表現方法を使っていますね。例えばデザインのベクトルでは手書きっぽい表現をしないようにしたりとか。でもこの作家活動って根詰めてやっていると、デザインで培った部分が絵に投影されたり、絵でやっている事をデザインにフィードバックしたりとか、実は自分の中でミックスしているという事も良く分かるし、結局ある程度影響しあっているんだと思います。ただそれでも常に入り口とアウトプットは分けて考えていますね」
 
81BASTARDSの活動はどうですか? 変な言い方ですけど役にたっている?
 
「役にたってますよ(笑)。尊敬できるし。もし加入していなかったらここまで活発に活動していなかったと思いますね。それぞれみんなの作品の変化も分かるしバンドみたいな感じです。もともと81BASTARDSはライブペイントのクルーみたいな感じで始まって、僕は最初の頃はキャラクターを描いていたんですけど、その中でアブストラクトに絡める作風も欲しいと感じていて、この3年くらいの活動の中でキャラクラーではなくてパターンの作風を作ってきたんです。他のみんなとの絡みを考えた上での発明だったんですが、それが今では自分の作風になっています。81BASTARDSの5人は、抽象的な表現が出来る人とキャラクターを描ける人がそれぞれいて、僕がキャラクターと抽象の2つのチャンネルで表現する事で表現の幅が増えると思ったんです。最近はあまり描いてないからキャラクターを描くのは緊張しそうですけどね(笑)。最近ライブペイントの機会も減っているから、みんなの記憶に残るようなパリッとしたライブペイントをやりたいですね。自分たちの中で伝説になるような凄いのを2時間とかでみっちりと」
 
そういう表現の場所を探すのも大変ですよね。どこでも良いわけじゃないし、タイミングを合わせるのも難しいんじゃないかと。
 
「そうですね。場所といえばですけど、この『W+K+』に一日中いると、知らないおじさんがフラッと入ってきて絵をじっと見てくれたりしてて、変な偏見を持っていたわけではないですけど、改めて『あ、おじさんも絵とか見るんだな〜』っていう新しい発見もありましたね(笑)」
 
人は見た目じゃ分からないですね(笑)。では最後に、今後について一言ください。
 
「今回は、もともと僕が持っていた世界観よりもアカデミックな方向にやったから、このスタイルを今後はもともとあるポップな世界観とどうやって合わせて行こうかなと思っています。それと、81BASTARDSとしての展示をロサンゼルスでやったっきりだから、みんなの作品が溜まったタイミングで日本でも展示をやりたいですね」
 
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SAND氏の個展『MUDDY』は今週末の2017年5月20日(土)までやっているので、もし予定の合う人はぜひ足を運んでみて欲しい。ラインだけで表現された様々な作品の中に、新たな発見を見つけられるかもしれない。

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